▲リンク集

  • 健康と病いの語り | DIPEx-Japan
    病気になった時、治療を選ぶ時、その後の生活で・・、人は何を感じ考えるのか。当事者が動画で自身の体験を語っています。内容別、年代別などに「語り」が探しやすくなっています。現在は乳がん患者・前立腺がん患者の「語り」が公開中です。
  • 健康を決める力:ヘルスリテラシーを身につける
    健康になるために”情報を収集し選択し利用する”力である”ヘルスリテラシー”を身につけるためのサイトです。多くの情報を得られる今の時代、健康になるために何を選ぶか、情報を使う力はとても大切だと思います。
  • 全国障害学生支援センター
    障害を持ちながら学ぶ学生を支援している団体です。入試やキャンパスライフ、就職など、経験と調査に基づいた豊富な情報が得られます。「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査」の結果なども公開されています。
  • 米国三叉神経痛協会(英語)
    三叉神経痛をはじめとする顔の痛みを抱える人・家族のための団体のサイトです。医療者を含め1000人以上が登録しています。研究の動向や最新の治療などの情報発信、体験談を共有するためのコミュニティ、若年者のチャットなどがあり、豊富な情報が得られます。
  • 聖路加看護大学看護情報学 研究室のブログ
    研究室のブログです。ゼミ担当者がその日の記録を書いています。
2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

e-patient

2012年1月12日 (木)

e-patient本 第1章~パワーアップすることが理想だと分かっていても。。

201201121

先日イントロだけ書いた、e-patient本の第1章。この章では、患者が情報を得てそれらを理解して、医師とコミュニケーションをとることがどんないいことをもたらすか・・ということが大まかに説明されています。

まず、喘息があり15年同じ医師のもとで診察を受けている男性患者と、20年高血圧で受診している女性患者の例を通じて、患者が経験する診療場面の典型例が紹介されています。二人とも定期受診の場面で、問診票に記入し、医師に気になることを伝え、薬の調節をし、受診は約15分ほどで終了。よくある「受診場面」の光景です。(日本では「三分診療」なんて言われますから、15分も医師とコミュニケーションが出来れば長い方なんて思ってしまいますけどね。)

次に、患者が受診時にこうして欲しいと求めることについて、一般的なことが書かれています。例えば、

・医師には、自分が言うことについて、しっかり注意を払って聞いて欲しい
・医師には、薬や血圧などのバイタルについて、正確に把握して欲しい
と言ったことです。

そして、(やや唐突な感じもするのですが)、賢い患者になるために、患者自身が知っておくべきことが、リストアップされています。

・病気の原因は何か
・検査を受ける必要はあるか
・どのような検査か
・いつ、どのように検査を受けるのか などなど。

医師とのコミュニケーションが良好でなく、上記のようなことを患者が理解していないと、適切な服薬や自己管理もままならなくて、不定期受診やER利用が増え、結局のところ、患者の健康状態(health)にも効率的な医療(cost)にも悪影響を及ぼします。

 

 

では、情報を得て理解し、エンパワーされた(力を付けた、賢い・・・などと、日本語では訳されているように思います)とは、いったいどのような人なのか。著者が理想とする患者像とは、例えばこんなことができる人だと言います。
・自分で自分の受ける医療をコーディネートできること
・一人の医師のところにただ何となく留まるのではなく、自分にとってベストな治療をしてくれる医師を選ぶこと
・自分が協働できる医療者チームを集めること
・自分のこれまでの状態について知り、それらを責任を持って受診時に説明すること
・自分が尋ねたい事柄について優先度を付けた質問リストを持って、受診すること
・医師が勧める情報リソースについて、アドバイスを求められること
・自分で行動できなければ、自分に代わって様々なことをしてくれる人に助けを求めること。
・医師がすることもしくは何かをしないことで不快に思うことがあれば、それを適切に伝えること

などなど。

 

1章は、以上です。次章からは、このようにエンパワメントされた患者になるために、ネット上のネットワークや健康医療情報をどのように利用していけばよいか・・・ということが、書かれている模様です。期待。

==感想など==
医師とのコミュニケーションが良好であることが、患者の健康状態に重要であることは、これまでずっと言われてきたことです。また、患者が賢くなること、患者自身の責任なども、最近では当たり前のように言われるようになってきました。そのような流れを受けて、”賢い患者像”も、様々な所で描かれています。

日本では例えば、賢い患者になることを推進している市民団体のコムルが「新・医者にかかる10箇条」を作り、公開しているといった例があります。

 

ただ、言うは易し・・・。実際に上記に書かれたような”エンパワメントされた患者””賢い患者”は、一体どのくらいいるでしょうか。また、こういうのが理想だと言われても一朝一夕でなれるものでもないと思います。ましてや健康を害した時にこれをやらなくちゃいけない(自分でできなければ少なくとも人にお願いしなくちゃいけない)のだから、それはとても大変です。

また、こういった理想的なあり方を示すことは大事ですが、それを強調し過ぎると、エンパワメントされた状態になれない場合、その人自身を責めるような”victim blaming”になるのではないかという懸念も感じます。

 

今回のe-patient本。一番最初の章だからかもしれませんが、予想よりはるかに理想論が誇張されている感が否めず、新しい知見を得られるものではありませんでした。。もちろんこの先の各論で、どうやったらネットを使ってこういったエンパワメントされた患者になれるのか・・ということが、書かれていることを期待しています。期待しながら、でも批判的に、、、読み進めていきますわ。

2012年1月 7日 (土)

博論を提出した日にe-patientの本が届きました

201201071

昨日、博士論文を提出してきました。いつもアップアップしていて、今回も最後の最後まで本当に出せるの??という状態だったので、出せたことにほっと一息。そして、多くの方に感謝の気持ちでいっぱいです。気を引き締めて、審査の準備へ♪

 

 

そして、論文を提出して帰ってきたら、私の博論の内容ともとっても近い、一冊の本が届いていました。

 

201201072

2011年発行の本で、年末に見つけて注文したのですが、論文を提出した日に届くとは!Good Timing!読みましょう読みましょう。

 

ここに書いてあるe-patientとは、(何度もブログでは書いていますが、)ネットを使って健康医療情報を得て、サポートネットワークを築く人のこと。”patient”と書いてはありますが、病気を持っている人だけではなくて、健康な人も入ります。また、近しい人が病気になった時に、治療法やサポートを求めてネットを利用する家族や友人、介護者の人も含まれます。

e-patientのeは、本来、e-mailのeと同じで電子機器を表すelectronicsから来ています。ですが、今では、人々が力をつけること(empowerment)や、医療者と対等に話が出来ること(equal)、また、よく学んでいること(educated)を表します。

 

2007年に出されたe-patient white paperには、人の療養生活や健康増進に、ネットがどのように役立つのか・・・ということが、象徴的な実例とともに紹介されていました。(原文はこちら。PDFです。自分でもメモ的に”e-patient”のタグをつけてブログのどこかに書いたのですが、完成度に低い本当のメモなのでご容赦ください。。)具体的には、小児希少疾患患者の母親同士がウェブ上でネットワークを作り情報交換することや、原因不明の難病の患者が医師や研究者を巻き込んでサポートグループを作り、治療法の開発に結び付いた・・・といったことが書かれていました。

そして今回の本では、より日常的かつ具体的に、e-patientなる人々がどのように日々を送っているか、ネットを利用することが人々の健康にどのように影響する可能性があるのか・・・ということが書かれている模様です。以下、目次を並べてみます。

====

<目次>

・第1章・・・パワーアップして医療者とコミュニケーションをとる

・第2章・・・デジタルでの医療記録(当事者が利用できる電子カルテ)は、あなたの命を救う

・第3章・・・e-mailやポータル機器、スマートフォンを利用した継続的なケア

・第4章・・・e-patientは病院をどう選んで、病院で何をするか

・第5章・・・医療安全の話、自分や家族の健康をどう守るか

・第6章・・・遠隔地で受ける医療

・第7章・・・患者中心医療

・第8章・・・ウェブ上にある様々なリソース

・第9章・・・プライバシーの保護

・第10章・・・医療コストをどうマネジメントするか

・第11章・・・2050年の医療

====

というラインアップ。もともとe-patientとは米国で生まれた言葉で、この本も米国の医療制度をベースにしています。制度や文化、それに関連する医師患者関係にも違いがある日本に、すぐにこの本での実例を当てはめることはできないかもしれません。

ただ、”患者のより良い健康”を望めるGood practice(良い実例)があるのですから、文化や制度が違うから適応できないと言うだけで、学ばないのは怠慢だと思うのです。

 

 

というわけで、せっかくこのタイミングで手元に届いてくれたので、この本を少しずつ勉強しながら、ここにもアップしていこうと思っています。

不定期更新になってしまうと思いますが、ご興味のある方、お付き合い頂けると嬉しいです。(ご意見ご感想なども、お待ちしています。)

 

あ、ご一緒に読んでくださる方は密林で買えます^^↓

2011年11月 3日 (木)

なぜ保健医療看護分野でICT(情報通信技術)なのか。

201111031

 

どんな研究をされている方も、自分が行う研究を表すキーワードがあると思うのですが、私の場合、その中の一つに、ICT(Information Communication Technology;情報通信技術)があります。情報通信技術は、日本では「IT革命」という言葉で有名になりましたが、海外では、コミュニケーションのツールという意味合いが強く、ICTと略されるのが一般的です。

私が保健医療看護分野の研究をしたいと思った時、キーワードにICTを入れたかった理由。それは、ICTは「持たざる人が持てるようになる」ツールだからです。

 

 

それは具体的に言うと、こういうことです。例えば人が病気になったとき、患者さんやその家族はインターネットをはじめとするICTを使うことで、今までは得られなかったような様々な情報を得て、仲間とつながって、医療者とコミュニケーションをとりながらより良い療養生活を送ることができます。障害を持つ人も、ICTを使うことで様々な情報が得やすくなって、そのことで学習の機会や就労の機会を広げることが出来ます。

また、情報を得るばかりでなく、社会にモノを言いにくかった人、意思疎通が難しかった人がICTを利用することで、自分の思いを伝えたり、何かを表現したりすることができる可能性があるのです。

 

 

今日、このことを改めて振り返ることになった素敵な本と、そこにかかわる素敵な方々に、出会いました。出会った本は、こちらです↓



この本は、脳幹出血で倒れた宮ぷーが、彼を懸命に支えたかっこちゃんと一緒に、「レッツチャット」を使って”おはなし”ができるようになった、その日々が丁寧に書かれた本です。私は、ネット経由で出会ったこれまたとても素敵な方に、先日初めてお会いして、時間を忘れて話し込んで、そのあと、この本をプレゼントして頂きました。

 

私は看護を専攻している上で、ロックトインシンドローム(意識はあるが四肢が動かないことで、意思を伝えられない状態)の方が、色々な機器を使ってコミュニケーションをとることがあることを、知識としては知っていました。けれど、一生懸命がんばると、医療者が”これは重症だから回復は難しい”と判断した状態から、こんなにも「おはなし」が出来るようになるなんて、、、、正直とてもびっくりしました。そして何より、かっこちゃんの一生懸命さと、宮ぷーさんの優しさに、強く強く心を打たれました。

 

 

自分で書いてなんですが、「持たざる人」という呼び方は、ちょっと上から目線な感じがして、私はあまり好きではありません。でも事実、今まで様々な障害や病気で情報を得にくかった人が、ICTを使うことで、色々な可能性が開けます。情報を得るだけでなく、自分のことを伝えて、人とコミュニケーションをとって、他の人とつながって、学習や就労の機会を得て、社会に「参加」する可能性が広がるのです。

 

 

それが、本当にそうなのか、(私の単なる思い込みではなくて、みんなが納得するように、説明が出来るのか)、具体的にどんないいこと(意義)があるのか、また、どう使えばその意義を最大限に発揮することができて、逆に情報を出す側としては、何に気をつけたらいいのか・・・。

それを研究という形で表していくことを、地道に、これからもずっとやっていければと思っています。

 

改めて色々なことを感じて、私の研究の原点を振り返らせてくれたこの本と、この本をプレゼントして下さった方に、心から感謝しています。宮ぷーとかっこちゃんのことは、「宮ぷー こころの架橋プロジェクト」や、「おはなしだいすき」など、ネット上にたくさん情報があります。私も早速、メルマガに登録させていただきました。そして、微力ながら、ツイッターやブログに書くことで、宮ぷーやかっこちゃんを、応援していきたいと思っています。

 

 

ICTは、単に、仕事がサクサク片付くための便利なツールではありません。(もちろんそれも大事ですけどね。)また情報化社会は、単にコンピュータに囲まれたハイテク社会を表すわけでもありません。

ICTは、保健医療看護分野において対象となる人々にこそ、社会参加のためにとても重要なものなのだと、私は思っています。多分私自身も、病気や障害を持ちながら生活することにおいて、ICTに助けられた人の一人です。

まだまだ、保健医療分野でICTというと、ネット上の情報の信頼性の低さが問題になったり、電子カルテの話かと思われる日本ですが、そうではない、エンパワメントツールとして大切な意味があることを、もっと伝えていけたらと思っています。

研究がんばろう。

2011年3月10日 (木)

医療の研究者としてのe-patient(e-patient白書から、その7)

すっかりご無沙汰してしまいました。更新をさぼっている間にも、色んな事と色んな出会いがありましたよー。振り返りながら記していこうと思います♪

(今日、大学時代にすっごくお世話になった先生から、ブログ発見しました♪とはがきを頂きました。わお!緊張する。。。笑。でも、すっごく嬉しいお便りでした。有難うございます!頑張ります☆)

 

そして、e-patient白書の続きです。

原文はこちら(PDF)

この章の冒頭は、ある脳腫瘍を抱えた学生の話です。彼は、もともと医学生でしたが、3年時の時に辞めて、自分の脳の中にある腫瘍について、専門に研究することにしたそうです。

当初乗り気でなかった教授陣も、彼をアシストすることになり、ついに、その細胞が成長するメカニズムが明らかにされました。これは、過去に多くの研究者が挑戦してなしえなかった偉業でした。

 

 

●受け身の患者から、積極的な研究者へ

多くの医学的な現象は、当初医療者ではなく、患者により発見されることが多いものです。心臓の血流を増加させる薬剤として用いられていたバイアグラが、性機能の回復に役立つことを発見したのも、患者の気づきからでした。

インターネット時代以前は、患者が科学的な知識の社会的な蓄積に貢献するものだとは、全く思われてきませんでした。けれど、多くの情報を共有できるようになった今日、患者自身の気づきや患者自身が研究者となって科学に貢献することが、あり得ないことではない時代なのです。

 

 

●命を救ったオンラインコミュニティ

ここで紹介されているのは、94年に腹腔内の平滑筋肉腫と診断された女性の話です。彼女の夫はもともと公衆衛生(public health)の研究者でした。彼は、妻が診断されてから、メーリングリストに入って、そこから情報を得るようになりました。

ある日夫は、妻と同じ病状に対して、他の病院で新たな検査が行われていることを、メーリングリストを通じて知ります。そして、そのテストのことを担当の医師に話したのですが、医師は新たなテストのことを、全く知りませんでした。

夫は次に、メーリングリストで、その検査をしてくれる病院を知り、ある医師を尋ねて行きました。するとそこで検査を行った結果、妻はGIST(消化管間質腫瘍)という違う病気であると診断されたのです。

当初、GISTには、特効薬がありませんでした。しかし、検査をしてくれた医師から、現在GISTに対して治験が行われているという情報を得た夫は、すぐに妻をリストに登録し、治験の対象者になりました。その治験で用いられた薬が、グリベックです。結局グリベックが奏功し、妻は命拾いしました。

 

夫は、妻がGISTであると診断された後、新たにGISTに特化したメーリングリストを始めています。当初5名だったのが、次第に50名以上に膨れ上がり、現在でもGISTの薬物の有用性に特化したメーリングリストとして機能しています。

 

 

●医師はいないグループ

多くのメーリングリストは誰でも参加できるものですが、この夫が作ったGISTのメーリングリストは、患者とその家族限定のプライベートなものです。登録希望者は、本当に患者かその家族であるか、厳密に審査されます。GISTの治療を行っている臨床家や、研究者も、このメーリングリストには入れません。

しかし、このメーリングリストで始まった集まりは、とても組織立っていて、メンバーが集めた図書リストや、それが置いてある図書館も一覧になっていますし、ニュースレターを書く専門の人、ウェブマスター、会計係、科学チームもいます。

科学チームは、10名ほどの積極的に参加しているメンバーによって構成されていて、最新の論文をレビューしたり、治療医や研究者と話をしたり、他のサポートグループの動向などをチェックしています。

また、メンバーには、ウイルス学者、微生物学者、外科医、物理学者等のアドバイザーもいます。メンバーは他のメンバーに対して、GISTの治療や最新知見について、質の高いニュースレターを配信しています。

 

このメーリングリストを作った夫は、この稀有なメンバーについて、こう言います。「数年後には死んでしまうかもしれないという重篤な疾患を抱えた人は、しばしば、類まれな才能を持った人たちです。」と。

 

 

●時にして致命的になる、研究におけるタイムラグをなくす

患者が主導になっている研究の最も優れた点は、そのスピードにあると、この夫は言います。

研究者主導の研究は、目的を立てて、ファンドをとって、対象者を集めて、実験をして、さらに、それをペーパーにまとめて、それがピアレビューされて、リライトされて、公表されるまで、かなりの時間を要します。

そのタイムラグのために、その治療で救えたはずの多くの人が、亡くなっているという現状があるのです。

 

 

●自分たちの研究を公表する

2001年の6月、それまでGISTのメーリングリスト内で共有されていたニュースレターが、初めて、GIST患者に対するグリベックの有用性に関する公式な研究として、公表されました。また、その年の10月には、このメーリングリストの中から生まれたグリベックの副作用に関する包括的な研究も、新たに公表されたのです。

実際のサイトと、研究チームの取り組みはこちらで紹介されています。これがもとは、一つのオンラインコミュニティから始まったなんて、すごい!!!同時に見つけた日本のサイトも、充実しています。

 

 

●患者から始まった、胃食道逆流症の研究

もう一つの例は、第三子を妊娠したことを知った母親の話です。母親は出産に際してある懸念がありました。それは、上の二人の子供がどちらとも、重度の胃食道逆流症(GERD)だったのです。しかし、そのことを医師に相談しても、医師は、親から子へ遺伝するものではないと言われていました。

8カ月後、母親は双子を出産しました。すると、その二人ともがまた、GERDだったのです。

その時点で、医学的な論文に、GERDが遺伝性があることは掲載されていませんでした。しかし母親は、これは遺伝子が関係しているに違いないと考え、それを明らかにしようと、当時、「子どもと成人のための胃食道逆流症協会(Pediatric adolescent gastroesophageal reflux association)」を始めたばかりだった別の母親と協働して、いくつもの医学的な研究チームに働き掛けました。

 

絶え間ない努力の結果、一つの研究チームが遺伝子研究を進めることになりました。もちろん、協会の患者や家族メンバーも、研究に協力しました。そして、ついに2000年、GERDが遺伝性があること、またその症状をつかさどる責任遺伝子のマッピングが記された初めての論文が、公表されたのです。その論文には、発起人である最初の二人の母親も共著者として名前が挙げられました。

実際の論文はこちらです!
。(お名前が挙がっているMcGraw C, Pulsifer-Anderson EAのふたりが、発起人の母親です。)

 

 

それ以外にもここには、多くの、e-patientが研究を進めた例が紹介されています。

・染色体の18番目が欠損している珍しい染色体異常の子どもに、成長ホルモンを投与すると、聴覚障害だけでなく、IQ向上が臨めるという研究を出した、母親の例。彼女が当事者の情報共有のために立ち上げたのが、このサイト。現在彼女は、テキサス大学ヘルスサイエンスセンターの遺伝学・小児科学の助教授となっているそうです。

 

・自閉症スペクトラムに関連する遺伝情報をつきとめようと、ある自閉症の子供を持つ母親が、自閉症の子供を持つ家族から細胞の提供を受け、データバンクを作成した例。実際のサイトがこちら。このデータバンクの遺伝子を研究に利用する研究者は、研究内容を必ず公表するという制約があるそうです。今ではこのプロジェクトは19カ国、1168家族の遺伝子を扱うまでに成長しています。

 

・結合組織に症状が出る遺伝性疾患である、弾性線維性偽性黄色腫(PXE)の子どもを持つ母親が、上の、自閉症の子供を持つ母親と同じように、遺伝子情報のデータバンクを作り、研究を進めた例。彼女が立ち上げたサイトがこちらです

 

 

●将来の医学研究における、e-patientの役割

インターネットがなかった時代は、研究とは研究者がきちんと手順を踏んで行うものでした。しかし、e-patientが研究者になったり、研究者のパートナーになるこの時代では、研究を行う際に、より多様なアプローチが可能になってきました。

The Life Raft Groupの初年度の予算は、225,00ドルです。しかし、このグループの残した業績は非常に大きな意義がありました。e-patientは、時に、研究者が持ちえないようなモチベーションと発想で、偉大な研究成果を残すのです。

このような、e-patientに主導される形で行われる医学研究は、今後、ますます重要になってくると思われます。

 

 

【全体的な感想】

今回のチャプターの話、最初読み始めた時は、にわかに信じがたいと思ってしまいました。患者が研究者になるとか、患者主導で、研究がどんどん進むとか・・・。

信じがたいと思っている時点で、私は医療者目線なのかもしれません。。というのを反省しつつ、読み進めてみると、実例が出てくる出てくる。。そして、実際のサイトを訪問すると、本当に組織だった活動をされている様子が分かります。

 

 

目からうろこ!

 

臨床家も研究者も、もっと、e-patientから積極的に学ぶべきことがたくさんありますね。

 

 

そして同時に、今回強く思ったのは、患者の役割・・もっと言うと、患者の責任について。

日本だとどうしても、患者さんは守るべき、弱い存在と思われがちです。医療者も患者さん本人も、そう思っている場合が多いのではないでしょうか。(データをもとにモノを言っているわけではありません。。)

ですが、病気について学んで自分の健康を維持・向上させる役割は、患者さん自身にもあるのだということを、もっと、医療者もそれを促し、患者さん当人も自覚してもいいのかもしれません。

 

ふと、先日、がんと就労の研究報告会に行って伺った話を思い出しました。もっと「患者側が何をすべきか、パートナーとして何が出来るか提案しながら、巻き込んでいって欲しい」と、おそらく患者さんの立場の方が発言されたのです。

 

本当にそうです。実験室で行うような研究ではなく、かつ、実践に活かすための研究なら、当事者と協働しないで行うことは非効率なのかもしれません。

また、今は、インターネットを利用すると、例えば体調が悪かったり、仕事や家事で時間がとれない当事者とも、ディスカッションすることが可能です。また、当事者の中で交わされた会話は、集合知としてネット上に蓄積されています。

これをいかに活用するか。。。それが問われているのかもしれません。

 

今回の章は、医療における研究の在り方が、今後変わることを予見させるものでした。私も一研究者として、今後、今回の章のことは、何度も思い出すことと思います。

時に自分たちが医療者のパートナーになる必要があり、自分たちが医療者を導くくらいの責任があるんだ・・ということ

2011年2月25日 (金)

オンラインコミュニティの驚くべきその複雑さ(e-patient白書から、その6)

前回は、患者さんの個人的なネットワークの話。言わば、病気になってから知り合った人ではなくて、その前から知り合いだった人たちと、インターネットを使ってどうネットワークを築くかという話でした。

今回は、患者さんのオンラインコミュニティの話です。私は個人的には、ここにとても興味があります。ではでは。

 

●オンラインサポートコミュニティ(オンラインサポートグループ、オンライン自助グループ、オンラインコミュニティ等々、日本語でも色々な呼び名がありますが、なるべく本文に忠実に文字にします。)

2001年の調査(←もう十年前のデータ!)では、米国人のネット利用者の28%、およそ3400万人が、何らかの健康問題のオンラインサポートコミュニティを利用した経験がありました。

具体的な内容は、AIDSや乳がんから、うつ病やストレス、体重減少や禁煙を目指すものから子育てや介護まで、あらゆるテーマが含まれます。

オンラインコミュニティはもちろん、政治やスポーツ、ニュースを共有するためのグループなど色々ありますが、健康関連のコミュニティは、その中でも非常に多くの人が利用し、重要な位置を占めるものです。

 

 


●大事な情報は、保存されるべき!

ここで紹介されているのは、1995年に妻が乳がんと診断された夫の例。妻は最初病院に行ったら、非浸潤性の乳がんと診断されました。でも、医師からは、「大丈夫です。」と言われ、リンパ節を郭清して、予防的にケモをして、ルーティンで決まっている脳と肺と骨の写真を撮りましょうと言われたそうです。その時間は、診断されてから、わずか10分。

その対応に疑問を持った夫は、自宅でネットで検索し、乳がん患者のメーリングリストを発見。そこで、妻の診断と医師から言われた治療法が妥当かどうか聞きました。そうすると、4時間ほどの間に、とても多くの返事が返ってきたのです。

多くの返事の中には、最初の医師の提案は、随分時代遅れの治療なのじゃないかと思うという意見がありました。さらに、そのメーリングリストで、ある医師を紹介されたので、夫は数日後に、話を聞きに出かけてみました。

 

新たな病院の医師からは、最初の医師の診断には同意するけれど、やはり治療法は時代遅れであることを告げられました。そして、代替案を提示され、それに納得できたので、男性の妻はこの医師のもとで治療を進めることにしたそうです。

 

もちろん、治療中、男性はメーリングリストを活用して、既に治療を終えた人や他の医療者から、多くの情報を得て、妻の療養生活に活かしました。

 

しかし、ある日突然、なんと、そのメーリングリストが閉鎖されると通知が来たのです。実はそのメーリングリストは、ある大学のサーバを利用して立てられたものだったので、そのサーバの移転に伴い、使えなくなるということでした。

妻の療養生活に必要な大事なデータを消されては困る!と思った男性は、自らウェブサイトを立ち上げ、そこで、メーリングリストのメンバーは意見交換を続けることになりました。

 

 

10年が経過した今(2005年)、男性の妻は、元気で生活をしています。そして、男性が作ったウェブサイトは、世界で最も大きなオンラインコミュニティの一つになっているのです。(実際のサイトがこちら!)この男性とその妻の例はまさに、オンラインコミュニティを活用して、療養生活をより良いものにした例であると言えます

 

 

昔は、多くの医療者はオンラインコミュニティに対して懐疑的でした。しかし、今では、オンラインコミュニティは、インターネット上の膨大な情報の中から、当事者に有用な情報を教えてくれる機能を持つものだと認識されていることが、研究からも示されてきています。

 

 

オンラインコミュニティ連合体

前の例はがんの話でしたが、神経学的な健康課題(日本では脳神経外科領域で扱う疾患)を抱える患者のオンラインコミュニティについて、面白い例があります。

 

てんかんや、多発性硬化症、パーキンソン病などの神経学的な問題を抱えた患者のオンラインコミュニティは、比較的早くから活発な活動を続けていました。

しかし、それらはばらばらに運営されて、同じような症状やそれによる課題を共有できそうだとしても、患者が、自分の疾患名以外のコミュニティに参加するということは、殆どありませんでした。

 

そこで、作られたのが、BrainTalk Communitiesというサイトです。ここは言わば、オンラインコミュニティを束ねたもの。ここは、病名が違っても疾患横断的な共通課題について、患者の問題解決が促されています。

 

 

●オンラインコミュニティは、ボトムアップなコミュニティ

医療者主導で患者をサポートすると、どうしても医療者の視点や枠組みでものを捉えるため、トップダウン方式になってしまいます。トップダウン方式では、患者は本当のニーズを満たすことが出来ないことも多くあります。

 

対して患者主導のオンラインコミュニティは、患者の言葉により、患者の考え方で、意見が交換されるため、それは文字通りボトムアップ方式でなりたつコミュニティです。医療者が入っていたとしても、その役割は、アシストするに留まります。

患者たちはそこで、メーリングリストやチャットルーム、ブログなど、様々な機能を使って、多様な社会関係を築いているのです。

医師に代わるわけではない、でも、重要なもの

ここでは、乳がんや前立腺がんといった重篤な疾患を抱える患者のオンラインコミュニティ参加者のうち、積極的に利用している191人を対象に行われた、1999年の調査が紹介されています。

調査内容は、専門医プライマリーケア医と、オンラインコミュニティの中で、最も以下に当てはまるのはどれですかというもの。項目は以下です。
(せっかくだから全部書きます♪番号は私が勝手につけました。)、

 

1、「自分の状態について、最も詳細な情報を得られた」

2、「自分の状態について、最もすぐに使える情報を得られた」

3、「自分の状態について、最も技術的な情報を得られた」

4、「他の医療情報源を探すのに、最も助けられた」

5、「自分の問題を正しく理解するのに、最も助けられた」

6、「自分が診断後に、症状をマネジメントするのに、最も助けられ、アドバイスされた」

7、「最も思いやりがあって、共感的だった」

8、「情緒的なことについて、最も助けられた」

9、「死そのものや死を迎えることについて、最も助けられた」

10、「最も便利に利用できた」

11、「最もコストがかからなかった」

12、「最も自分の長い療養生活において、共にいてくれた存在だった」

 

結果、オンラインコミュニティは、上記のうち(なぜか本文では順不同で)、10利便性、11コスト、8情緒的サポート、7思いやりがあり共感的、9死を考えるときに役立った、4医療情報を得られた、2すぐ使える情報が得られた、1詳細な情報が得られた、12共にいてくれた存在だったという、9項目で、トップに選ばれたということです。

 

この項目が、何を比較する目的にどこから持ってこられた項目かにもよりますが、少なくともこの範囲では、オンラインコミュニティは、患者にとって、医師に代わって治療をしてくれるわけではないけれど、このような多様な面で、役立つ資源であると言えそうです。

 

 

●忘れられてしまった大事な人たち(を巻き込むことも)

伝統的な医療では、家族や友人の存在というのは、医療の中から忘れられがちでした。しかし、家族や友人がともにオンラインコミュニティに参加することで、実利的にも情緒的にも、様々な側面から患者を支援することが可能です。

オンラインコミュニティは、そんな特徴も有しているのです。

 

 

●オンライングループの有用性に関するエビデンス

この項では、オンラインコミュニティの有用性に関する多くの論文が紹介されています、、が、ここでは細かく取り上げません。。。というのも、この白書は2007年のもので、その後もどんどん新たに論文が出ているからです。ご興味のある方は、PubMedやGoogle Scholarで、”Online community”とでも検索してみて下さい。すごい数出てきます☆

 

ただ、ここで興味深いのが、オンラインコミュニティの有用性に関する論文は、殆どが社会科学系の雑誌に載っているため、臨床家(特に医師)が目にしていないと思われるということ。

医療系の雑誌に掲載されるものでも、グループの有用性に着目しているものは、専門家主導のものが多いです。今後、臨床家の目に留まるように、分かりやすくオンラインサポートグループの重要なメリットについて、説明することが求められるでしょう。(それが下記。各項目に補足説明がありますが、ここでは項目だけあげます。)

 

<オンラインコミュニティのメリット>

○医学情報が、当事者と紐づいている(”Putting a Human Face on Medical Information”)

○日常的に病気のマネジメントに役立つアドバイスがもらえる(”Practical Day-to-Day Illness Management Advice”)

○いつでも頼れる(”e-Groups Are Always There”)

○治らない状態に対しても、継続的なサポートが得られる(”Providing Continuing Support for the Incurable”)

○珍しい状況(症例的に珍しいのと、生活状態なども加味した珍しさと。)に対して、その人に合った利点がある(”Special Benefits for Those with Rare Conditions”)

 

【全体的な感想】

 

今日の範囲は、今まで日本の乳がん患者さんに話を聞かせて頂いたことと照らして、非常に頷ける話でした。

 

特に、印象的だったのが、Braintalkのオンラインコミュニティ連合体の話。

個人的な話ですが、私が参加しているFacial Pain Association(ダイレクトに訳すと”いかつい”ですが、「顔面痛協会」とでも言いましょうか。)も、もともとはTrigeminal Neuralgia Association(三叉神経痛協会)で、三叉神経痛一つに特化したサポートグループでした。勿論オンラインコミュニティを持っているから、私が日本から参加できるわけです。

それが今は、「顔の痛みがある病気は三叉神経痛だけじゃないけど、食事や洗顔・メイクなどに有用な対処方法は、共有できる知恵が沢山あるわよね(翻訳風に、私が解釈してます☆)」ということで、数年前に、連合体になりました。

最近は特に、Facebookにグループを作ったりTwitterで呟き始めたりと、そのソーシャル化が活発です☆助かるわ~^^

 

この考え方には、「共有できるものは共有しましょ。そのほうが便利じゃないですか!」。。という、いかにもアメリカらしい合理性が活きていると思います。もちろん、利用者としても、多くの有用な情報が得られるのは、有難いです。

こういった、「使える資源は共有し、横に連携するような仕組み」は、インターネットが普及した情報化社会ではしやすくなっていますし、ますますそのニーズも増えるのではないでしょうか。

 

縦割り社会と言われる日本では、横の連携が苦手のように感じます。しかし、例えば病院の看護計画でも、電子カルテシステムでも、院内教育カリキュラムでも、保健所ウェブサイトでの情報提供の在り方でも、共有したほうが効率がよく、コストもかからず、かつ、改善点も集合知としてあがってきやすくなって、より良いものが出来上がると考えられます。

 

勿論、中身自体は、その施設や自治体に合ったものにする必要がありますが、「様式」や中身の「軸」は、共有できると思うのです。

それができる技術がある現代ですから、積極的に情報を共有するように動いていけばいいなと思います。逆に、それをしないと、この変化の激しい時代では、後れを取るのかもしれません。

 

 

また本章に関してもうひとつ、オンラインコミュニティに、本人に加えて友人や家族にも入ってもらうことのメリットは、きちんと考えたことがなかったなと改めて思いました。確かに、友人や家族に協力を仰ぐ時、多方面で情報が共有されていることは便利です。

どこの範囲まで共有してもらうかは(前回も書きましたが)文化差があると思うので、米国の例をそのまま持ち込むことはできません。ですが、個人のネットワークとは別に(もしくは重複させて)、オンラインコミュニティに家族や友人が入ることのメリットも、示していきたいですね。

家族にとっても、例えば自分の妻や夫が、こんなに多くいる患者の中の一人だと感じて、同じ家族の立場の人たちとも気軽に話が出来ることのメリット は、測り知れないような気がします。(あ、ちゃんとエビデンスを示すには、測らないと・・ですけどね。「測り知れない」とは言葉の綾。日本語って難しい わっ 笑)

やることいっぱいです。

もしよければ、上の三叉神経痛協会のFacebookやTwitterに参加して、有用な情報があったら、私に教えて下さい(なんてね♪)☆私も、たぶん一生お付き合いする症状なので、積極的にサポートネットワークを広げて行こうと思います。

 

 

2011年2月24日 (木)

患者中心のネットワークとは(e-patient白書より、その5)

やっとチャプター3です。期限もなく、誰かにやらされているわけでもないので気楽だしとても面白いですが、あれこれ寄り道をしながらメモっているため、時間がかかります。

ま、気にしない。(どんどん先を読みたい方は、元を当たってください(PDF)・・そして、教えて下さい☆ 笑)

今日のChapter3のタイトルは、

患者中心のネットワーク:ケアのためのつながりのあるコミュニティ(Patient-centered Networks: Connected Communities of Care)です。

お気づきのとおり、患者はインターネットを利用して、単に医学情報を得ているだけではありません。インターネットで医学情報を得るのは、患者のネット利用のほんの一面です。

多くの患者にとって、より重要なインターネット利用が、インターネット上での自分のネットワークを気付いている人とやりとりをすること(Online interactions)です。

Haythornthwaiteという方の分類では、個人のネットワークには、一週間に一度以上連絡をとる「近いつながり(closest ties)」の人と、数週間に一度~月に一度くらい連絡をとる「重要なつながり(significant ties)」の人、それに一カ月に一度以下しか連絡を取らない「より広がったつながり(extended ties)」の人がいるそうです。それらに加えて、短期間で集中的に会った人や、オンラインで会ったことがある人などが、「弱いつながり(weak ties)」の人が、個人のネットワークとされます。

このような、社会関係を築く個人のネットワークは、健康を維持し、疾患を効果的にマネジメントするのに重要であると言われてきました。インターネットを使って、個人のネットワワーク内でコミュニケーションをとることは、社会的、情報的に、意義がありそうだとこの章で述べています。


●インターネットの代理利用

医療者は、「医療の受け手のインターネット利用」と聞くと、本人が利用していると思いがちです。しかし、実際に、2003年の調査結果では、e-patientの81%は、家族や友人のために健康医療情報を得ているという代理利用でした。この数字は、自分自身のために情報を得ているとする58%より、多い数字です。

この代理でネットを利用する人もまた、単に医学情報を得るのみならず、先輩患者(expert patient)や、臨床の専門家(specialist clinician)と、インタラクティブなコミュニケーションをとっています。この代理利用をする人たちも、人が医療を受けることにおいて、重要な意思決定者であると言えそうです。

●新たに診断された人を助けるネットワーク

人は新たに病気を診断されたら、自分のネットワークに支援を求めます。

ここでは、13歳で脳腫瘍と診断された子どもの母親が、どのように自分のネットワークを使ったかが事例としてあげられています。まず、母親は、e-mailを利用して近しい人に連絡をとることで、あっという間に即席のサポートグループを作り出すことに成功しました。

また別の例では、新たに病気を診断された人が、友人にネットでそのことを伝えたら、相手はサポートグループを紹介してくれたり、参考になる本をアマゾンで買ってくれたり、オンラインの医学図書館で文献を探してくれるかもしれない・・とあります。

人が病気になった場合、インターネットが有用なのは、既存の医学情報を得たり、サポートグループを利用できるということだけではありません。ネットを利用することで、それ以前からあった個人のネットワークから、サポートを得ることが断然しやすくなるのです。

ここでは、腎臓の病気を発症したJudyと、その親友であるLennyが、どのように個人のネットワークを利用して病気に対処するための資源を得たかという例が載せられています。Lenny(親友)がJudy(患者)の知り合いや近しい人に、Judyの情報を送り続けたことで、そのネットワークはたちまち、Judyにとって有用な、Patient-centeredなサポートネットワークになったことが示されています。

このように、インターネットは、文字通り、”患者が中心になった”役立つサポートネットワークを構築するのに、優れた威力を発揮するものであると、著者らは述べています。


●個人の健康関連のネットワークが、軽視されてきたのはなぜか。

これまで、様々な患者中心のネットワークについて見てきましたが、この患者中心のネットワークの重要性は、これまで軽視されてきました。それはなぜでしょうか。その答えを示唆するものとして、ある家族の例が紹介されています。

この家族は、両親が体調を崩した時に、兄弟5人で情報を共有しようと、家族用のYahoo!Groupを立ち上げました。そこでは集めてきた情報を共有するとともに、両親の受診日についてカレンダーを作成して、全員が確認できるようにしました。これは、家族にとっては非常に有用なツールでした。

今や、多くの家族が、同じようなことをしていると思われます。しかし、そのプロセスが文書に残されていない可能性があると、著者らは言います。2006年の段階で、家族内だけで利用しているYahoo!Groupは分かっているだけでも12000ありますが、それらを研究対象にすることを考えても、非常に個人的なことが含まれており、匿名性を担保したままシェアすることが出来ないのです。これが、インターネット上での患者中心のネットワークが、調査されて来なかった理由でないかと著者らは言います。

●持続する健康問題への、継続的なサポート

患者中心のネットワークは、持続的なサポート提供が可能なものであるものです。ここでは、肺がんの診断された日から、1年目、2年目という記念日を、どのように迎えたかを回想する患者の例が書かれています。

患者の気分は、長い療養生活において、上を向いたり下を向いたり、一定ではありません。そのような不安定なプロセスにおいてもなお、患者中心のネットワークは、絶えず、継続的なサポートを送ってくれるものであったと述べられています。

●私たち専門家が、患者中心のネットワークから学べること

患者中心のネットワークについて分かっていないことは多いですが、これは、既に一般的な文化(popular culture)となりつつあると考えていいのではないでしょうか。本章を読んで、患者中心のネットワークが、この情報化時代の医療において、価値のあるものであることがよく分かったと思います。

インターネットを用いた患者中心のネットワークについて、専門家がその意義をもっと学べば、フォーマルな医療システムとは独立して、患者が利用できる有用な一資源として、提案することも出来ると考えます。

【全体的な感想】

今日の章の内容は、果たして日本でも適用可能でしょうか。

著者らも中で述べていて、私が知らないだけかも知れませんが、家族メンバーの健康問題に対処するために、グループ機能を利用している人が、今の日本にどのくらいいるかということです。

また、ある健康問題を抱えた人をサポートするために、MLの立ち上げまでするのは、稀なのでは??とも。

もちろん、現状で利用していなくても、利用によるメリットがあるとエビデンスが示されれば、技術的には可能ですし、利用を推奨すべきです。そのことで患者中心のサポートネットワークが築かれ、健康状態向上に役立つのであれば、非常に有意義ですし、専門家としてはそれを(エビデンスに基づいて)推奨すべきです。

ただ、米国民でメリットがあるとエビデンスが見られたとしても、やはり日本への応用可能性は吟味する必要がありますね。そこには文化差があるので。

新しい技術への適用性や、疾患についてどこまで(近しい人だとしても)開示するかという人と人との関係性には、大きな文化差があるように思います。

現時点でe-patientが日本にも大勢いることは確かですが、その使い方や、今後の望ましい方向性については、日本人の文化・習慣にあった利用をさらに検討していく必要があることを、改めて感じました♪

2011年2月22日 (火)

患者由来の医療の在り方の続き(e-patient白書から、その4)

前回の続きです。患者由来(drivenは、由来か主導か・・・日本語って難しい!)の医療について、専門家が知るべき7つの結論のうち、今日は4つ目から。(本文はこちら。PDFです。

 

4.私たち(専門家)は、ネット上の医療情報の危険性ばかりを過大に評価してきた

インターネットには確かに、不完全な情報が含まれています。誰でも情報発信が出来るようになっている近年は特にそうで、ネット上には、よく吟味されていない情報も多くあります。でも、ネット以外には信頼できる情報しかないのでしょうか。

そして、患者のインターネット利用による実際の被害は、どのくらいなのでしょうか。この中では、ネットで健康医療情報を利用したことによる有害事象が紹介されています。しかし、昨今の医療ミス(Medical Error)に比べたら、患者がインターネットを利用することの健康への影響も、余計な医療費がかかることも、殆どありません。

 

また、多くの臨床家がネットを危ういものだと捉える背景には、医療情報は、電子カルテなど閉じられた情報システム内に置かれるべきものであるという考え方があるからだと著者らは言います。閉じられた情報システム内での医療情報は、供給する側がその質を判断する(Supply-side quality control measure)ものだそうです。医療者はそれに慣れ過ぎている可能性があると思われます。

 

対してインターネット上の情報は、開かれた情報システムに漂うものです。そしてこのようなシステムにおける情報は、情報を欲する者がその質を判断する必要があるのです(Demand-side quality control measure)。賢いインターネットユーザはそのことにすでに気づいており、アクセスできる情報全てを鵜呑みにするようなことはしていないのです。


さらに面白いことに、インターネット上には、不完全な情報が多くても、同時に、自分に必要な情報を見つけてくれたり、情報の良し悪しを判断したりできるようなツールを提供してくれているquality control systemがあります。

著者らは、ここで、それを総称して、Communitywareと呼んでいますが、具体的には、Googleのページランク機能、Amazonの☆つけなどが紹介されています。確かにこういうものを見ると、多くの人が、対象をどう判断しているのかが分かります。

加えて、e-mailやオンラインコミュニティ、ブログ等を利用することで、分からないことを質問して回答を得るというネットワークを、簡単に構築することができます。これらを効果的に利用することで、膨大な情報の中から有用なものを得ることが出来るでしょう。

 

 

5.可能な時はいつも、医療は、患者の領域で行われるべきものである

伝統的に、医療が行われてきた場所は、病院やクリニックといった、「医療者の領域」であり、専門家の領域でした。

しかし近年は、医療の受け手である患者が、人と人の間で信頼(interpersonal trust)をつくりながら、「患者の領域」を未だかつてないほど拡大させています。そして、やはりそれは、インターネットにその人を中心としたネットワークを、簡単に築けるようになったという功績が大きいのです。そのため「患者の領域」は、別の言葉で言うとself-help cyberspaceと呼べるでしょう。

患者が健康上の課題に直面した時にそれを解決するためのネットワークは、患者サイドにあるのです。そのため医療者も、そのような「患者の領域」で、医療を行う必要があると考えられます。

 

 

6.医療者は、もはや医療を一人で提供することは出来ない

少々エキセントリックな表題ですが、順を追っていくと中身は頷けます。医療の進歩が著しい近年では、医療提供に必要な医学知識の全てを医師が完全にアップデートすることには無理があります。

その場合、やはり医療を受ける患者自身に学んでもらう必要がありますが、その場合利用できるツールは、やはりインターネットでしょう。

 

患者がインターネットで学ぶことは、医療者の権威を脅かすものかもしれないし、本当にネットが患者にとって効果的なツールであるかどうか、医療者はにわかにしんじられないかもしれません。

しかし、よく学び、よく知識を得た患者は、医師の負荷を軽くします。また、医療者が知らないことを教えてくれることもあるでしょう。このようなことは、患者が単に自分の健康状態を向上させるだけでなく、患者が医師のパートナーになって医療全体の質をあげるということに貢献することになるのです。

 

まだ、患者がインターネットを使って情報を得るというe-patientの存在意義は、十分に理解されているとは言えません。今はまだ、インターネットがなく、医療が医療者主体で行われてきた枠組みの中でしか解釈されていないのです。今後21世紀の医療を考える際に、劇的な枠組みの変化を念頭に、ものを考える必要があります。

 

 


【感想(きのうまではちょこまか本文の中に入れてましたが、見直してても見にくいので(笑!)、やめてこちらにまとめます~。)】

 


例え文章で表されたとしても、目には見えにくい「社会における考え方の枠組み(パラダイム)」の変化は、渦中にいると分かりにくいものだと思います。そして、自分たちの考え方を否定されることは、(それが何百年の歴史を俯瞰した時に、より良い方向に向かう変化であったとしても)、やはり誰でも抵抗があるものです。


でも今、劇的な変化が起きているのだとしたら、それを目に見える形で示す必要がありますね。かつ、さらに良くするためにはどうしたらいいのかを考えるために、将来を予測すること。それが出来る道具として、多様な研究方法論がある・・ということに、人間の知恵の蓄積を感じます。頑張らなくちゃな。

 

 


そして、ふと思ったこと。


この白書は米国の状況で、こんなにネットが大事と、ネットで学べ・・と奨励しています。しかし、果たして日本人の患者がネットで学ぼうと思った時に、そんなに有用な情報が豊富にネット上にあるでしょうか。

 

 

ネット上に有用な情報がないとしたら・・・、これは、危惧すべきですよね。技術的には、玉石混交の中から玉を見つけるネットワークを構築することが、誰でも可能なのに、その玉がそもそもなければ、探しようがありません。もちろん、患者由来の有用な情報は沢山ありますが、それと同時に、専門家由来の情報も必要ないわけではありません。

 

ネット上の情報整備は、国を挙げて、施策としてもっと力を入れるべきところなのではないかと、改めて思いました。

 

 




それから、よく学んで知識を得た患者が医療者にとってのパートナーになるというのは、改めて納得。この例を呼んで、思い出したのが、救急車の不適切利用の例です。


患者がよく学んで知識を得ることが、行動に結びつけば、そのメリットは、その人個人の健康状態の向上に留まりません。患者の学びと行動は、医療システム全体により良い変化をもたらすものであり、医療のあり方を模索する医療者と、社会に必要なパートナー関係を構築できるんですよね。

 

 

医療資源が限られている中、やるべきことは、目先の制度改革だけでなく、やっぱり患者の学習であり、ヘルスリテラシーの向上に行きつくように思います。そしてその手段として、ネットを利用するのが効果的なのではないでしょうか。

To be continued...

 


2011年2月20日 (日)

患者由来(Patient-driven)な医療とは?(e-patient白書から、その3)

e-patient white paper(PDF)から。

(本日も、本文に書いてあるもの以外の私のつぶやきは、斜体でお送りします☆)

 

先日、この白書全体の7つの結論が書かれているとしてあるブログをご紹介しましたが、ここに書かれていた結論とは、今日読む第2章の要旨だったようです。と言うわけで本日は、「患者が由来の・・・Patient-drivenな」医療についての話です。

まず患者はインターネットをどう利用しているかを区分したものとして、Content,  Connectivity, Communitywareと3つに分けられています。

 

2003年にEysenbachというカナダの研究者が、がん患者がインターネットを利用することの効果について、レビューしたもの(PDFです)があるのですが、その中で彼は、患者のインターネット利用を、Content(www), Community, Communication, とわけていました。その頃に比べるとネット利用の方法が多様化したことで、より包括的な言葉が使われていますが、基本的な中身は変わりません

このような患者によるネットの利用方法を踏まえた上で、著者らはまず、こう問いを投げかけています。「ネット利用をする患者について、専門家が知らない重大なことは何か?」と。そしてその答えが、Patient-drivenな医療にあると言うのです。

 

冒頭にもあげましたが、ここではこの問いに対して7つの回答を導いて説明しています。

まず専門家が知らない、e-patientに関する重要なことの一つ目としてあげられているのがこちら。

1.e-patientは医療において勝ちある資源であり、それを医療者は認識すべきであること

 

すでにe-patientは、患者たちにとっての医療を大きく変えていますが、医療の現場自体がそれによって変わることはまだまれです。

医療者は、患者に対して、ネットで調べましたか?とは尋ねないし、私たちはどうするべきだと思いますか?とも尋ねない。同じ患者さんがいますよということを紹介することさえ稀。多くの組織では、患者のメールアドレスは尋ねないし、患者に、自分たちの組織の評価者として意見を仰ぐということも、ほとんどしないとのこと。

そうですねえ。しないものが当たり前だと思ってましたもの。

 

 

ですが、疾患を抱えている人、特に慢性疾患患者は、疾患のために日々いろいろな意思決定を迫られている人たち。その人たちの知恵をもっと積極的に、他の患者さんのために活用することを考えるべきだとしています。

 

 

そしてネットがあれば、それが可能だということ。

 

具体的にここにはその方法は書いてありませんが、例えば近年、ブログやオンラインコミュニティの語りを分析する研究も盛んになってきました。文字情報で過去のものが全て蓄積されるという特徴があるネットには、体験者の知恵が埋まっています。それを、同じ立場の患者ももちろんですが、医療者も、積極的に活用すべきだと思うのです。

次に、

2. 患者がエンパワメントされるメカニズムは、私たち専門家が思う以上に巧みだということ

 

20世紀の多くの医療専門職は、医療者が知っている一定の知識を患者に与えることで、「患者をエンパワメント出来る」ものだと思っていました。しかし今は、患者をエンパワメントするには、患者の考え方の変化が必要で、その変化がなければ、医療者が情報をもたらしたところであまり意味がないということが分かっています。

ここでは、ネットを利用した介入をとりあげて、患者に対してトップダウン方式にターゲットを絞って、専門家由来の介入を行うことの弊害について、複数の研究が紹介されています。介入の結果、患者は知識も増加し、サポートを受けている感覚も上がったものの、自己効力感や健康関連の行動の改善には繋がらなかったというコクランのレビューもあります。

それ以外にも、ICTを利用した専門家由来の介入について、患者は行動レベルや健康アウトカムレベルでのエンパワメントに結びつかなかった例があげられています。他方、いくつか、成功だと思われたものも挙げられており、失敗例と成功例の違いについて考察してあります。

そこには、専門家が「患者にとって必要だと思う知識」を提供しているものは不成功に終わり、患者が効果的に自分の疾患を管理するための「考え」をコミュニケーションすることに焦点を当てたものが成功しているとあります。

 

そもそも、専門家が患者の自己管理能力を向上させるためのプログラムを作った時の仮説は、こうでした。

 

1、患者はその病気について、何も知らない

2、患者が知りたがっていることは、医師が患者に伝えたいことと同じである

3、医療者が患者に情報を伝えないのは、単に時間がないからだ

4、患者は医療者から学ぶべきことが非常に多くあるが、逆に医療者が患者から学ぶことはない

そしてシステムを作って検証した結果、この4つの仮説が全て間違っていたことが示されたということが説明されています。

 

 

ちょっと「目から鱗」的な発想ではないでしょうか。患者さんには、医療者が何かを教えてあげるものだと思っていた。。。こちらが学ぶことがあろうとは・・・・なんて、思った医療者の方、いませんか??

 

個人的な話ですが、数年前に、米国でConsumer Health Informaticsを学んできた研究者の方とお話しする機会がありました。その時私は、米国には面白い学問があるもんだ!と思ったばっかりだったので、Consumer Health Informatics(CHI)について、知りたくて知りたくて仕方なかったのですが、その際彼が、こう言ったのが印象に残っています。

「やっぱり、CHIの限界っていうものもあってね・・・」と。

その時は実はあんまり深いところまで理解できなかったのですが、もしかしたら彼は、こう言うことを言っていたのかもしれません。患者さんのために開発しているシステムの多くは、専門家由来のであって、患者さんのもの考えとは違う枠組みで作られているのだと。それゆえ、効果に限界があるのだと。。

(深読みかもしれませんが、当時は自分が絶対的に勉強不足で、建設的な質問もできなかったんですよね。今度改めて、聞いてみようと思います。)

 

 

本筋に戻ります。次に、専門家が気づくべきだと言っているのが、これです。

3.私たち専門家は、患者が有用な資源を生み出す人たちであるということを看過して来たこと

もしこれを読んでくださっている医療者の方がいたら、ちょっとこの問いを考えてみてください。

「専門家以外が書いている医療に関するウェブサイトは、信用できないと思いますか??」

 

この問いを頭に記憶しつつ、ここで紹介されている精神科医の話を読んでみてください。彼は様々な著者を記してきた精神科医です。その彼が最近、精神科疾患に関するウェブサイトについて選りすぐりのものとしてリストを作成しました。その名もBest of Best

 

余談ですがこういう時、英語っていう言語は、いいなと思います。日本語だとなかなかこういうキレのいい表題は考えつきません。

彼が優れたサイトだと選択するのに利用した基準は、内容、見栄え、利用しやすさ、全体的な印象でした。その中でも特に、内容は重視されました。

 

 

そして、いざ選択された16のサイトをみてみると、驚いたことに(私が驚いたのですが)選出されたサイトのうち、10個(62.5%)は患者が書いたもの、5つ(31.25%)は専門家が書いたもの、残りひとつは、ゼロックスPARCのアーティストグループが書いたものだというのです。

 

この「役立つサイト」を書いた患者は、医師が知っていることを全て知っているわけではもちろんありません。ただ、患者は、医師が知っていることをすべて知る必要があるのでしょうか?答えはもちろんNOです。そして、医師は、目の前の患者が必要としている情報がなにであるか、本当に知っているかというと、そうではないと思われるのです。

むむむ。。正直にわかには信じがたいことかもしれません。ただ、確かにそうです。多くのパンフレットで病気のことを説明されても、それが患者が本当に欲しくて有用な情報かというと、そうではない可能性が高いのです。言い方はきついですが、今までの情報提供媒体で提供されていた情報は、医療者のひとりよがりで選ばれたものが多かったのかもしれません。。

そして、著者らは、患者にとって必要で役立つ情報を提供してくれるのが、インターネットだと言います。インターネット上で様々なコンテンツを書いている患者自身が、意識しているか否かにかかわらず、彼らは、「オンラインヘルパー」として、他の患者を助けているのです。直接的にも、間接的にも。

 

 

 

最後に、38歳で完治不能な肺がんと診断された女性の話が紹介されています。彼女の職業はlibrarian。いわば、情報検索情報整理のプロです。

その彼女でもネット上のどの情報をどう利用するか、最初はとても迷いました。膨大な情報がありすぎて、判断がつかなかったそうです。ただ、その中で、非常に役立つサポートグループに巡り合ったことが彼女の情報利用を変えます。

オンラインサポートグループでは、自分の細かい質問にすぐ答えてくれるし、役立つサイトも教えてくれるなど、診断から初期の段階で、このサポートグループに非常に大きくサポートを受けたことが綴られています。何百という他の先輩肺がん患者に対して、手軽に質問が出来るこの環境は、ネット以外では得られなかったと言っています。

その後も、彼女がこのサイトにどの位助けられたか、具体的なアドバイスをどの位もらえたかが綴られています。

さらに彼女は、自分でもLung Cancer Onlineというサイトを立ち上げて、自分が役立ったと考えたサイトのリストあげて、新たに診断された患者さんを励ますようなコンテンツを作っているというのです。(実際に彼女が1999年に作ったものから発展しているサイトががこれです!!!

 

 

今日はここまで。

以下は、今日の範囲に対する私の感想です。

読めば読むほど、そうだよそうだよ!思います。患者さんが必要としている情報が、医療者が伝えたいと思っているものとは違う可能性があるということを、どの位の医療者が認識しているでしょうか。

もちろん文化差はあり、検証する必要はあります。ただ、今、調査をさせていただいている中でも、まさにこれと同じ現象が多く、生の声で語られているのを聞きます。

特にネットのヘビーユーザーさんに伺っているわけではないのですが、療養中に困ったことは、なんでもWebに聴いてますという人は、日本でも当たり前にいるのです。

こんなに役立つ資源がネット上にあるのなら、医療者が手弁当でパンフレットを作ることに時間を費やしている場合じゃないです。だってその情報は、患者さんが欲している情報とは違う可能性があるのだから。。

2011年2月19日 (土)

人がネット利用でどうエンパワメントされるか(e-patient白書から その2)

e-patient白書(PDFです)のつづきです。(また、私の感想やコメントなどは、斜体で示しました)

今回はいよいよ、患者がネットを利用してどうエンパワメントされるかというお話。


まず患者のエンパワメントの程度ですが、症状の重さと医師への態度という2軸によって4段階あるとのこと。症状も重くなくて、医師への従順に従うなら、Accepting、その次がInformed、さらに、Involved、In Controlと続くという分類がなされていました。

In Controlのほうが主体的な医療への参加が行われて、満足度も高く、健康状態も高いという研究結果が紹介されています。これは、患者中心医療の意義をあらわす研究で、多く言われてきたことです。

 

 

次に、患者が何にどの位ネットを利用しているのかという研究がいくつか紹介されてます。

 

例えば小児科クリニックの待合室での調査では、診療前にネットで疾患名や薬などを調べてきたという母親が22%いたというもの。そして、診察前にネットで勉強してきたことで、医療者が進める治療法が効果的だと、よく理解できた・・というのです。事前に知識を得ていれば、それはそうですよね。

そして著者らはこう言っています。「医師は相変わらずその重要性を否定したり、看過しているけれど、21世紀の最初の頃には、全ての臨床での医療提供者は、ネットを利用している患者を診察するだろう」と。

 

 

確かに、今、臨床で多くの患者さんと対峙している医療者はほぼ全員、インターネットを利用したことがある患者さんやご家族を相手にしているのではないでしょうか。ただし、それを医療者が認識しているかどうか、患者さんが医療者に伝えているかどうかは別ですが。

 

そして次も面白いのです。
冒頭に自分が担当している患者に情報を示さなかったために、患者が医師のふりをして医学図書館を利用したという話がありましたが、以前は患者に情報を渡さないこの医師の存在は当たり前で、医学部でも、自らの深い考えまでは患者に開示しないように、権威を保つような教育がなされてきたというのです。

 

 

なるほど。

昨日の会議でも医師文化の話がチラリと出ていましたが、そういう風に教育を受けてきたんですよね。誰が悪いとか短絡的な話ではなく、育ってきた文化の違いであるという話。ふむふむ。

 

 

それから、患者のネット利用に対する医師の態度は、利用を推奨してパートナーになろうとする医師と、明らかに不快な態度を示す者に二分されるという調査結果も。

患者のネット利用に賛成しない医師に当たった患者は、医師を変えるか、もしくは水面下で、医師に気づかれないようにネットを利用するだけだという研究結果も載っています。なぜなら、患者はネットが有用なものだと知っているからと。

 

 

そして、その後にこうあります。英語特有の歯切れの良い文体で書いてあって、私が意訳してしまうと台無しな感じがあったので、原文もうつしてみます。

Knowledge is power. What I find online helps me to feel prepared to talk with doctors and nurses. I know the terminology and the options.

(一応訳を。「知識は力です。オンラインで見つけた情報のおかげで、私は医師や看護師と話す準備が出来ているように感じます。ネットを利用することで、専門用語や治療について知ることが出来ているのです。」)

 

患者さんが、診療の際に、医師やナースにこう言えるようになったらいいなと思います☆

 

 

 

●Patientからe-Patientへ。

 

e-patientという言葉で表される患者は、従来のpatientとは大きく異なっています。どういう点が違うかというと、e-patientは、他者を助ける存在であるということです。

 

この章の冒頭で紹介された、ネットで知識を得ることで子供を失明の危機から救った女性は、この白書を作成する際のアドバイザーになっているそう。

彼女が、e-patientとして何を学んだかがサマリーになっていて、興味深いです。それが以下です。(ちょっと口語的に書いてみました。吹き替え版っぽくお読みください(笑))

 

 

「私は長年にわたって、医師は医学的なことについて絶対的な権威があるものだと思っていました。逆に、ネットは、膨大な情報があって、情報の質もまちまちなので、危ういものだと。実際、使い始めて、やはり混乱したことは確かです。

でも、その段階で、インターネットは少なくとも医師より多くの情報を与えてくれました。

医師は大事だけれど、医療システムが複雑になっている今日、医師が患者が抱える問題の全てに世話を焼くわけにはいかないんです。

なので、私たち医療を受ける立場の人は、今までは想像できなかったほどに、医療受ける際、中身をよく理解出来るように準備する必要があるのだと思います。」と。

そして、準備することが、エンパワメントにつながるんですね。

 

 

●全体的な感想

 

権威の話が出て来ましたが、ネットを利用することは、医療者を信用しないということではないです。そういう文脈で語られることが多いのは事実ですが、私は違うと思います。むしろお互いにとって、いい関係性を築くために、患者さんはもっと勉強する必要があるということ。それに便利なツールが、ネットなのだということでしょう。

 



個人的にはもう少し「e-patientが他者を助ける存在なのだ」というところに、つっこんだ記述を期待したのですが、ここにはそれほど書かれていませんでした。きっとこれから書いてあるはず。ワクワクです。

 

 

そして、本文とは関係ないことなのですが、最近本当に嬉しいなと思うのは、この人知ってる・・とか、会ったことある・・と言った研究者の方々の論文に、意図せずお目にかかることが多いこと。それは殆どすべてが、ネットでの健康医療情報関係の文献です。

 

長年一つの分野について研究されている方は、こういうことは当たり前なのかもしれないですが、駆け出しピヨピヨとしては、そういうこと一つ一つが嬉しいものです。

 

このe-patient白書でも、英国オックスフォード大学のSue Zieblandさんの論文が引用されています。彼女には患者さんの語りを動画で配信するDIPEx関係で、2006年の来日時にお世話になりました。

そして、e-patient白書の著者の一人でもあるSusannah Foxさんは、Health2.0のサンフランシスコで(遠くにですが^^)お目にかかれました。

さらに、既に他界されていますが、ご自身もe-patientで、この白書の最大の功労者として冒頭にお名前が挙がっているTom Fergusonさんは、私が修論を書いている本当に初期段階に、ネット上の健康医療情報について知らなくちゃと思って買ったHealth Online著者の方でした!

そのことを知った時、ちょっと感動してしまいました。。。

 

”患者さんのネット利用”というキーワードで、自分の中でいろんなものが芋づる式に繋がっていく・・。今まさに、そんな面白い時を過ごさせて頂いています。

ネットで健康情報を得る人は、どんな人??(e-patient白書から その1)

先日、e-patientというカテゴリーを作りまして。。その中でもふれた、2007年発行のe-patient白書(PDFです☆)にぼちぼち、目を通しています。全訳することは難しいですが、メモ程度にここにご紹介していければと思います。

人がネットで健康医療情報を得ることは、本人に、同じ病気の人に、医療者に、そして社会に、どんないいことがありそうなのか。わくわくすることが書いてありそうな予感です。

私のメモや感想なども織り込んでいこうと思います(本文の内容と区別するために、本文に書いてない私の感想などは斜体にしてみます。。。忘れなかったら。)きちんと中身を読みたい方は、原典を当たってくださいませ☆

 

・・・はじまりはじまり。

 

まず、最初に二人のケースが取り上げられています。

 

一人目は、自分が受ける治療について知りたくて、医師に聞いたが教えてくれなかったので、医師の振りをして院内の医学図書館を利用して文献を得たという男性。

もう一人は、16歳の娘が訴えた頭痛症状が気になりネットで調べたら、最近に飲みはじめた薬の副作用の可能性があると考えられたので、専門医に見せたら、やはり副作用でありそうだとのこと。すぐにその薬は中止になり、娘を頭痛や失明などの重大な危機か救ったという方。

 

ここでは、後者の母親のことをe-patientと呼んでいます。そして、e-patientはネットを利用して何をしているかというと↓こちら。

・臨床での医療提供者が説明しなかった治療法を探す

・診断が間違いないか、ダブルチェックしている

・補完代替療法について学習している

・他の患者が受けた治療法や他の医療医療機関で行っている治療法と、自分が医師から説明された治療法を、比べる

・現在の医療者と、他の医療者を比べる

 

・・ということをしているとあります。

このブログを読んでくださっている日本の医療者の方々は、ご自身が目の前にしている患者さんが、ネットをつかってこういうことを日常的に行っていると思いますか?それとも、ネットなんか使ってないと思いますか???・・日本ではどうなのだろう。知りたい。知らなくちゃな~。

 

●Dr.Google

 

ここでは、2006年の段階で、米国民の73%がネットを利用していて、うち、8割が特定の疾患や治療法、食生活や栄養、サプリメントに関すること、エクササイズに関することなど、16個の健康関連のトピックのうち少なくともひとつにアクセスした経験があるという調査が紹介されています。

また、2002年の調査では、特定の医療について情報ニーズがある患者は、医師に聞くよりも二倍ほどネット利用が多かったという調査もあるそうです。

 

さらにネットでの健康医療情報利用率が高い18歳以下を調査結果に含めると、米国で、健康医療情報をネットで得るe-patientは、この段階ですでに1億2千万人に上るそう。

こんな風に、健康関連のことで知りたいことがあればググる・・ということが日常的に行われていて、Dr.Googleが大活躍している時代なのですね。

 

この人たちがどのような人たちかというと、想像に難くないですが、ネットでの健康医療情報へのアクセスは若い人ほどさかんで、18ー29歳が82%と最も高い割合。ただ、もっとも低い65歳以上でも26%の利用率。

 

5年後、10年後には今55歳の人は60代になるわけです。e-patientの分布も変わってきます。

また、ネットでの健康医療情報収集には、男女差もあります。女性は伝統的に「家族内でのケア者」という役割があり、女性の方が情報収集がさかんとのこと。これは他の論文でも非常に多く言われてきたことです。

 

ふむふむ。

 

 

●e-patientの3区分

ここでは、ネットで健康医療情報を得るe-patientを3区分に分けて、その人たちが同ネットを利用しているのかを説明しています。

3区分は、元気な人(The Well)が60ー65%、病気になったばかりの人(The Acute)が5ー6%、慢性的な健康問題がある人(The Chronics)30ー35%です。ネットでの健康情報の利用頻度は、想像に難くないですが、高い順から、病気になったばかりの人、慢性的な健康問題がある人、元気な人の順です。

 

面白かったのは、慢性的な健康課題があるChronicsの人たちの利用の仕方。彼らは、オンラインコミュニティの利用率が最も高い人たちで、お互いに支え合うことを行っているとのこと。

そして、あとから同じ健康問題を抱えた人たちのbig brother/sister として機能すること。さらに、健康問題に関するブログを立ち上げて、ネット上に資源を提供するのも、この慢性的な健康課題がある人たちが、最も多いと書かれています。

 

今や日本では一生のうち二人に一人が診断されるがんも、(もちろんがん種や年齢にもよりますが、)慢性疾患と呼ばれるほど療養生活が長くなっています。高齢化社会でもあり、慢性的な健康課題を持つ人の割合が増える中、ネット上に資源を提供する人たちも増えている。。と考えることが出来そうです。

 

 

e-patientのうち病気になったばかりの人(The Acute)は、全体の5ー6%と人数が少ないだけに見過ごされがち。

しかし、e-patient全体では、人は平均して30分くらいかけて2ー5つのサイトを見ていますが、病気になったばかりの人だけを見ると、そのニーズの高さから、短期間に集中的に何時間もかけていくつものサイトを渡り歩いていることがわかっています。それだけに彼らがネットから学ぶことは、非常に多いはず。

 

そして次に書かれていたことにも、わくわくしました。せっかくなので直訳します。「病気になったばかりの人や慢性的な健康課題を持っている人たちの多くは、多くの医療専門家やネット上の健康関連の研究者よりも、より洗練した方法で、インターネットを利用している」という調査です。(これも一つの調査結果ですが、「洗練した方法」とはどんな方法なのか、より詳しく今後出典に当たってみようと思います。)

 

 

 

☆以下、今回の範囲の、全体的な感想などです。☆

 

e-patientの中で、この「病気になったばかりの人や慢性的な健康課題を持つ人たち」は、まさに臨床で医師や他の医療者が出会う人たち・・です!

 

 

専門家は、(特に医療の専門家は?)、自分たちの知識体系や考えが、患者のそれより優れていると思いがちです。それは確かに、ある部分では正しいと思います。(そうでないと教育を受けてきた意味がないし。。)

しかし、専門家の知識体系が全てではないし、今は、その専門家が優れている「ある部分」のうちいくらかは、ネットを利用すれば学べる時代なのかもしれません。それに、体験から得た日常的な生活知は、はるかに医療者よりも患者さんの方が優れています。

 

患者さんは、医療を提供する技術はもちろんないですが、知識は得ることが出来る・・そういう時代なのかもしれません。

 

 

日本は、ネットの普及率は欧米に引けを取らないにもかかわらず、こういうネットでの健康医療情報利用に関する調査研究が殆ど行われていません。医中誌を、あさってみても、殆どない!これは危惧すべきこと・・ですが、逆に言うと、ネットを活用して患者さんが学んだりエンパワメントされたりする余地が、まだまだあるということですよね。

もちろん文化差はあります。米国が全てお手本になるわけではないです。ただ、日本での現状を知らなければ、根拠を持った支援にはならない。。患者さんがネットを利用をすることでいいことがあるなら、支援の一つとして、利用を薦めていくというのもありです。

でもそれには、根拠であるエビデンスが必要です。

 

 

というわけで、こんなことを扱いたいと思っているD論に、今日も取り組むわけなのです♪やるぞ~~~~!!!

より以前の記事一覧

フォト